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コラム

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さがす人、つくる人の住まい

 家づくりには建築士の存在は欠かせないものですが、設計事務所となると、どうも「敷居が高い」「とっつきにくい」などのイメージがあるようで、なかなか依頼ができないという話を耳にします。

そこで、一級建築士事務所 設計処櫻での「家づくり」が実際にどのように進められるのかをご紹介したいと思います。

 

出会いは1通のメールから

『はじめまして。私は2世帯住宅を新築しようかと考えております。昨年末より、ハウスメーカー2社と大まかな話を2〜3回しているような段階なのですが…』という書き出しの1通のメール。それが施主と私の出会いとなりました。

メールには大まかなイメージと要望などが書かれていたので、少しだけ下調べをして事務所来訪の約束をした日を迎えることになります。

面談は日曜日

依頼主(Kさん)と初めてお会いしたのは、まだ雪が残る寒い日曜日の午前10時。来訪されたのは、背が高くて真面目そうな30代半ばのご主人と、とびきり明るい奥様。『はじめまして』の挨拶の後、緊張もすぐにとけ、真剣で楽しい打合せへと発展します。

話の軸となったのは、2世帯の生活スタイル。アレルギーに対する不安が少しあること。そして、進めるにあたって欠くことのできない予算と土地をどうするか。それらを踏まえて希望の部屋数、工法や設備、ハウスメーカーと工務店施工の場合での保証制度や進め方の相違点、設計事務所に依頼することのメリット、デメリット。それらについての要望、質問、アドバイスなど約3時間かけての面談となりました。

その中で印象的だったのは「私たちの希望する住宅はハウスメーカーでは対応しきれないのかも?と思いました」というKさんご夫婦の言葉でした。

Kさんご夫婦は一般的な規格化された間取りでは満足できなかったのかもしれません。それでも、やはりハウスメーカーに依頼するアフターを含めた安心感は捨てがたく、色々と悩みながら話を進めているのでしょう。そんなKさんご夫婦には、どのような提案をするのがベストなのか。私も試行錯誤することになりそうです。

土地探し&現地調査

Kさんの選んだ地域は新興住宅地ではない、閑静な場所です。そこで、ハウスメーカーから勧められた土地Aと、Kさんが自分で見つけた土地Bが候補地として挙がっていました。

土地Aは100坪を超える広い土地で坪単価も安価なのですが、南側に2階建が立っていて日当たりがあまり望めないことと、幹線道路に面しているがゆえ騒々しいという印象。

土地Bは主要道路から奥まっている分譲地で北西側の見晴らしが良く、南側には平屋が建っていますが日当たりは悪くない。ただ、面積が80坪弱とAより狭く、角地のため坪単価が高い。

どちらにするか迷うところですが、私としては「主要道路から奥まっている方が子育ての環境として良いかもしれない」「隣接する住宅の雰囲気が良い」「個人売買ではなく仲介業者が入っている安心感」という点から土地Bを勧めることをメールで伝え、プランニングはBにて考えること、それが出来上がったら2度目の面談をすることを約束したのです。

プランニング

さて、仲介業者から土地の資料を入手して、いざプランニングです。先日の約3時間の面談と、その後のメールのやり取りからKさんの住宅に対するイメージを膨らませます。しかし、1回お会いしただけですから、Kさんご夫婦も要望全てを伝えることはできていないと思いますし、私もまだKさんご夫婦の本心からの要望は計り知れないところがあります。

まずは、土地Bを有効に利用できるような間取りプランを2通り用意して、それを元に色々と意見交換ができればと考えました。「その中から選ぶ」ではなくて「それを元に一緒に考える」無駄な作業にも思えますが、何もない状態で話すよりも、とても効果的な方法です。

再面談

土曜日の午後。2通りのプランを前にお話を伺うことになります。同居されるお母さんとの生活スタイルについてや、家族全体の生活パターン。それに加えて全体的な好みや持たれているイメージが話題に上ります。

そんな中でも夫婦間の好みの違いは必ずと言っていいほどでてくるものです。それでもKさんご夫婦が二人の中で解決しようと努力をしているのにはとても好感が持てましたし、そういう努力に応えなければという義務感が生まれました。

またまた3時間に及ぶ面談で、色々な話をする中、私が受け取ることができたのは、北欧のデザインやインテリアが共通の好みであること。また、古くなっても古さが味につながるようなデザインにしたいということ。漠然としていますが、これは大きな収穫となりました。

再プランニング

北欧デザインと一口に言っても様々な様式があり悩みどころ。あまりモダンにしてしまうとKさんご夫婦の明るくて素朴なイメージから離れてしまいそうな気がしますし、あまりカラフルにしてしまうと、近隣の街並みから浮いてしまうようにも思います。それに、古くなっても古さが味につながるような、となると、あまり装飾が無いデザインの方が良いのかもしれない。そんな事を考えているとき、思い出したのがバルト海に浮かぶゴットランドの中世の建物。シンプルな感じが、ご夫婦のイメージにピッタリのように感じて、その線でプランを進めました。

イメージがどんどん固まり、『絵』になっていきます。それでもまだ『絵』の状態。ここから、予想できる範囲の概算見積と借入計画等を試算して、資料をまとめていきます。

こうして、2度目の面談から数日が過ぎた頃、次にお会いする日時が決定しました。

3度目の打合せ

前回までの面談などでイメージしたプランの提示。平面、立面、パース、概算見積、借入計画などをまとめたプランを説明していきます。気に入って頂けたようで、奥さんの「ツボです」という一言が嬉しかったです。

このプラン図を元に話が弾み、無垢(むく)のフローリングと一般的なフロアの違いは?塗壁ってどういう感じ?など仕上材選びや、お風呂は造りとユニットバス、どちらが良いか?キッチンは?など設備の話題にも発展します。ここは『百聞は一見にしかず』過去に設計した住宅を見学させて頂くことにしました。

見学&プラン検討

3度目の面談を終え、その後、メールでのやり取りでプランに対する要望を再検討しながら見学の日を迎えました。

見学した家は、床は無垢の樺フローリング、壁は漆喰(しっくい)塗、建具は集成材の無塗装というシックハウス対応の住宅です。天然素材を使ったメリットとデメリットの説明をさせて頂きながら、Kさんの家にはどの部分を取り入れるかを話し合います。漆喰塗には魅力を感じないけど、無垢のフローリングは採用したいなど、好みが具体化する一方、この時点でもKさんはまだ迷っていました。

ハウスメーカーの安心感を取るか、それともオーダーメードの家づくりを進めるか。その時の気持ちをKさんは「『価値や評価が確立されている高級ブランド腕時計』と『指導を受けながら自分で作る世界唯一の腕時計』のどちらを取るか、といった感じです。」と、例えています。

悩み迷いながらも、そろそろ土地を決めなければならない時期が迫っていました。

決断&設計監理契約

日曜日の打合せを毎週のように重ね、1カ月半が過ぎようとしていた頃、Kさんから決断したというお話を受けました。Kさんは、その決断理由として(1)提案頂いたプランそのものの魅力 (2)オーダーメードの魅力 (3)住宅建築本来の姿であることの魅力、をあげています。

また、「単なる住宅新築の依頼先ではなく、本当のパートナーと一緒に“家”をつくりあげていくことに代えがたい価値を感じた」という言葉も頂きました。

こういう風に感じて頂けると、本当に設計者冥利(みょうり)に尽きると共に責任感が増してきます。

しかし、ここからが本当の意味での家づくりの始まりです。細部にわたっての打合せ、検討と決定を繰り返し、可能不可能を明確にしていく過程が待っているのです。基本設計を進める中、着工までの数カ月、Kさんご夫婦と私は様々な検討を繰り返すことになるのです。

(次号につづく)

 

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