



家づくりには建築士の存在は欠かせないものですが、設計事務所となると、どうも「敷居が高い」「とっつきにくい」などのイメージがあるようで、なかなか依頼ができないという話を耳にします。
そこで、一級建築士事務所 設計処櫻での「家づくり」が実際にどのように進められるのかをご紹介したいと思います。今回はその第3回目。
地鎮祭&ご近所への挨拶
釧路も暖かくなってきた頃の大安吉日、地鎮祭を執り行うことになりました。午前10時、小雨降るあいにくの天気ですが、そこは「雨降って地かたまる」ということで。
厳島神社の神主さんに祝詞(のりと)をあげてもらい、「エイ、エイ、エイ!」の声も高らかに滞りなく約30分程で終了。列席者の方々は祭壇の前で記念撮影…と、微笑ましい光景です。
その後、Kさんご夫婦と施工会社の方と一緒にご近所への挨拶まわり。着工すると工事車両が頻繁に出入したり、騒音を伴う工事もあるわけですから、これは大切なこと。お会いしたご近所の方々はとても良い雰囲気で「おめでとうございます」と言って下さいました。これから永くご近所づきあいをすることになるのですから、とても有り難いことです。
そんな中、3歳になるKさんの長男君が走り回るのを見ていると、庭や家の中の風景が目に浮かんできて「快適な空間を提案しなければ」という気持ちが大きくなります。さぁ、いよいよ着工間近。気を引き締めて進んでいきましょう。
いよいよ着工!
確認申請も終わり、土地の決済も済み、現場では遣り方(建物の配置や高さを決める作業)の日になりました。建物の配置を確認し、基礎の高さを出していきます。整地してみると、生い茂っていた雑草で判らなかった敷地の高低差が見て判るようになりました。
接している道路の勾配から、考えていたよりも隣地つながりの部分の高低差が大きいようで、駐車場側から敷地高さを決めていくと、見積りでみていた土留めでは若干足りなくなってしまいます。
設計時には法面(斜面)処理も含めて考えていた土留めですが、施工業者とも色々と検討した結果、敷地内の水処理も考えて土留めを1段高くすることで合意。
実は、家を建てるときは「隣の敷地より高く」と考えてしまいがちでこういう高低差ができることがあるのです。特にこの土地は角地なので、それが顕著に現れてしまったのでしょう。
土留めを1段高くすることで若干の見積オーバーとなってしまいましたが、理由を説明するとKさんも納得して下さいました。最初に確認したときは雪が積もっていたこの土地。今後は雪が降る前に引っ越しができるように工事を進めることになります。
基礎工事
地盤改良の後、布基礎のラインに沿って穴が掘られ、そこに基礎のベースが造られます。ベースができあがったら次は立上り部分の鉄筋を配置する作業。鉄筋のピッチや重なり長さ、開口の補強、金物の位置などを指示、確認します。
同時期に住宅の10年保証の検査員による検査も行われます。施主にとっては2重の検査になりますから安心も倍増しますね。今は任意加入の10年保証も来年以降には義務化される予定で、安全な住宅を供給するという意味で体制が良くなることを期待しています。
さて、検査が終わったらコンクリートを打設するのですが、このコンクリートも重要です。今回の工事では21N/cスランプ15というJIS規格品のコンクリートを使用します。
建物の基礎はあとでやり直すことができない重要な部分です。できるだけ施主自らJIS規格である証明書をもらえるかどうかを施工会社に確認した方が良いかもしれません。
躯体(くたい)工事
この住宅は、一般的に在来工法と呼ばれる木造軸組工法で、柱と梁から構築される構造です。一般的な工法と違う点は、1、2階共に床に28mmの構造用合板を用いることで床根太が無いことと、外壁面全てを構造用合板で面構造としていること。これにより気密もとりやすく、また、構造的にも強固とすることが可能となります。
土台、1階、2階…と建ちあがって行くと判る木材の多さ。「この家、木材が多くないですか?」って言われたほどです。できあがったら隠れてしまう木材や金物だからこそ、気を抜かないで考え、そしてしっかりと施工する。これが一番大切なことだと考えているからかもしれません。
あいにくの天候不良が続いて少し遅れ気味の工程でしたが、シート養生により木材を濡らすこと無く、また事故も無く無事に上棟することができました。これに続いてコンセントやスイッチの配線や排水管、給水管の配管も施工されます。
この類は完成後の追加が難しいことから十分過ぎる程のプランになってしまうことが多いですが、将来の生活シーンをしっかりと想定した結果なので施主からは好評のようです。
工事中の変更
工事が進むに連れて、Kさんご夫婦もイメージが具体化する一方、もっと良くしたいという気持ちが膨らんできます。前もってパースでのイメージづくりをしていた甲斐も有ってか、サッシや屋根の色、外壁の塗壁部分の色は早々に決まり、サイディングはピックアップしていた見本の中から柄をチョイス。
外観のイメージ決定は着々とすすみ、ポーチのタイルへと移行。見積りはベージュに近いテラコッタタイルでみていたものの、1冊のタイルカタログから外観イメージにとてもよく合いそうなタイルをKさんの奥様が発見。
ただ、このタイル、お値段も高めなのでコスト的にはかなり難しい。というわけで見積りを業者に依頼。これと同じく、2階の手洗いカウンターのタイルも見積り時とは別のタイルで依頼。それらを後日、比較検討の後に採用するか否かを決定することになりました。
その他、照明器具や造作キッチンの取っ手など、未決定だった施主支給部分も、もうそろそろ金額も含めて決定しなければならない時期になっています。請負工事金額プラス施主支給分の金額イコール全工事金額。それに先の追加部分、家具やカーテン、引っ越し費用も考慮しなければなりません。
既におおよそのところが決定されているものの、それらを比較しながら、できることとできないこと、必要なものとそうではないものを徐々に選んでいくことになるのです。
窓一丁!追加で…
サッシが取り付けられ、壁で囲われた段階でKさんのお母さんから「部屋が暗く感じる」という言葉が。窓の面積は充分なのですが、多分、壁合板の色と回りに張ってある防護ネットの影響もあって暗く感じるのでしょう。
でも、気持ち的にはキッチン横の壁に小窓が有ると視覚的に開放感があることは事実。そこで、構造的に問題が無い部分に迷わず細いスリット窓をつけることを決定。
実はこの住宅、奥様の要望により比較的窓が多い。特に2階リビングはとても開放感が有ります。窓が多いと断熱上はあまり好ましくないと言われますが、今回は、北西、北側の窓は断熱効果の高いLOW-Eガラス、南面は窓際のポカポカ感を得るために通常のペアガラスを採用していますので、快適さは保てると考えます。
釧路は冬季間の日照率が悪くないので、こういった使い分けもひとつの方法。それぞれの考え方や住まい方に柔軟に対応し決定していけるのも設計事務所の得意とするところであり、また注文住宅の最大のメリットです。
窓の追加や未だ決まっていない部分もあるという状況ですが、現場は、Kさんの「より良い家づくりを、係わる人全てと一緒に楽しみたい」という熱い気持ちが、棟梁、大工、その他業者の皆さんに伝わったかのように、とても良い雰囲気で、Kさんも私も訪れるとついつい長居してしまうほど。これも家づくりの思い出のひとつとなりそうです。
(次号につづく)